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トルーマン・カポーティの短編集『誕生日の子どもたち』から、少年の成長を描いた物語をご紹介します。本作は、22歳のカポーティが田舎に住む叔母にプレゼントした作品です。そのまま約40年間世に出ることなく眠っていたという、とても貴重な短編です。
『わしのことを覚えていてくれよな』
主人公のボビーは、両親と祖父母が暮らす小さな農家で育ちました。家族がそろって暮らす穏やかな毎日でしたが、小学校へ入学する年、父親が新しい生活を始めるため親子三人はヴァージニアへ引っ越すことになります。別れの日が近づくと、祖父はボビーにこう語りかけました。
「お前はもうすぐここを出ていっちまうんだろう。お前がいなくなると淋しいよ。お前は知らない人たちのあいだに入っていくわけだが、わしのことを覚えていてくれよな。」
僕は祖父を抱きしめ、もちろん戻ってくるよ、と約束しました。おじいさんもおばあさんも絶対に忘れたりしないよ、と。
【自由の代償】
ヴァージニアでの暮らしにも少しずつ慣れ始めた頃、祖父から一通の手紙が届きます。封筒には、慣れない活字体で「ボビー様」と書かれていました。しかし、その手紙には祖母が亡くなったこと、そして一人残された祖父の深い寂しさが綴られていました。
成長するということは、新しい世界へ踏み出すことです。新しい環境で経験を重ね、自分の人生を歩み始める一方で、それまで当たり前だった家族との時間は少しずつ遠ざかっていきます。この作品は、少年の成長に伴う「別れ」や「喪失」、そしてどこか拭いきれない「罪悪感」を通じて、自由を手に入れることの裏に潜む複雑な感情を描いています。
短編集『誕生日のこどもたち』は、少年少女の純粋な心を通して、人の成長や孤独、愛情が繊細に描かれた内容が特徴的です。といっても、子ども向けのお伽噺とはまったく異なります。私自身、この短編集を読み進める中で、カポーティならではの凝りに凝った美文を理解するために、何度も立ち止まったり読み返したりながら、文学の奥深さを学ぶことになりました。
これで、村上訳によるトルーマン・カポーティ作品のご紹介をすべて終えることができました。最後までお付き合いくださった皆さま、本当にありがとうございました。
「晩年のカポーティの肖像」
§追記§
村上春樹の3年ぶりの長編小説『夏帆』が発売されましたね! 早速ご紹介といきたいところですが、作品をより楽しんでいただくにはどうすればいいか・・・しばし思案中です。




