村上春樹レヴューのブログ

自称村上主義者の私が独自の切り口で作品をご紹介します。

2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

【海辺のカフカ(上)】

本書は【カフカ少年】と【ナカタ老人】の各章が交互に進行し、互いに呼応しながら一つの物語を形作っていく構成です。先に発表された『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』で同様の手法が用いられていることをご存じでしょうか。 以前このブログで…

【⑭リトル・ガール】(『最後の瞬間のすごく大きな変化』より)

今回はグレース・ペイリーが書いた《民間伝承もの》です。これまでにはなかった残虐な描写が登場しますが、そこには本書のテーマを追求するうえで、避けられない理由があるようにも感じられます。 《あらすじ》 黒人のカーターは公園で家出少女をナンパし、…

【バースデイ・ガール】(『バースデイ・ストーリーズ』より)

本作は村上春樹自身が短編集『バースデイ・ストーリーズ』のために書き下ろした作品です。国語教科書に採用されていますが、派手なイラストで単行本化されたのを記憶している方も多いのではないでしょうか。本短編集が英語圏で刊行された時には、「人生と幸…

【⑬ノースイースト・プレイグラウンド】(『最後の瞬間のすごく大きな変化』より)

今回は作者のグレイス・ペイリー自身をモデルにした『フェイスもの』です。彼女の作品はアメリカ人にとっても簡単に吞み込める文体ではなかったようです。20世紀を代表する女性作家と呼ばれた彼女が、かつてはアメリカ文学界において理解されない時期があっ…

【ライド】(『バースデイ・ストーリーズ』より)

著者のルイス・ロビンソンは、この短編集に作品が選定された当時は30歳を過ぎたばかりの若手作家でした。サザビー専属ドライバーやウニ取り潜水夫、トラック運転手などを経て、現在はメイン大学の教員を務める異色の経歴の持ち主です。親友、恋人、親子など…