村上春樹レヴューのブログ

自称村上主義者の私が独自の切り口で作品をご紹介します。

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

【品川猿】(『東京奇譚集』より)

『東京奇譚集』の最終話をご紹介します。先の第4話で本短編集の総括をしたばかりなのに順序が逆では?と思われるかもしれません。書いている私自身も当惑気味ですから。ともかく、順番通りにご紹介してその意図を探ってみたいと思います。 《あらすじ》 安藤…

【⑨緑したたる島】(『ワールズ・エンド(世界の果て)』より)

本書の最終話はプエルト・リコに駆け落ちした若いカップルの話です。緑したたるその島は、楽園のイメージとは裏腹に若き二人に厳しい現実を迫ります。この最終話を通じて、いつものように本書全体を俯瞰してみたいと思います。 《あらすじ》 二人は妊娠とい…

【日々移動する腎臓のかたちをした石】(『東京奇譚集』より)

本作は短編集『神の神の子どもは踊る』に収録された『蜂蜜パイ』の続編になっています。前回のご紹介で、主人公の淳平と作者の視点を重ね合わせて短編集全体を俯瞰してみました。その後の淳平が描かれた本作からも、短編集の全体像に迫ってみたいと思います…

【⑧ボランティア講演者】(『ワールズ・エンド(世界の果て)』より)

ポール・セローの8作目は、世界中を転々とする外交官の話です。あらゆる国の常識・非常識を受け入れる彼らの適応力は素晴らしいのですが、それに連れ添う家族の苦労がしのばれる作品です。 《あらすじ》 僕は次の任地に赴くまでの休暇中に、ドイツに配属中の…

【どこであれそれが見つかりそうな場所で】(『東京奇譚集』より)

今回ご紹介するのは、高層マンションの非常階段で姿を消した男の話です。都会の片隅で起きた不思議な話をご紹介します。 《あらすじ》 依頼者は証券トレーダーの夫と品川のマンションの26階に住んでいた。3年前に義母が同じマンションの24階に越してきた。義…