村上春樹レヴューのブログ

自称村上主義者の私が独自の切り口で作品をご紹介します。

2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

【アラスカに何があるというのか?】『頼むから静かにしてくれ』より

カーヴァーは前妻メアリアンとの25年に及ぶ夫婦生活で、頻繁に引っ越しを繰り返しています。前妻の奨学金を頼りに、イスラエルに半年間移住したこともありました。彼らの夫婦生活がどのようなものだったのか、次に紹介する作品はその一端を垣間見る思いがし…

【60エーカー】『頼むから静かにしてくれ』より

カーヴァーはワシントン州ヤキマの出身です。その地域にはインディアンが暮らす保留地があったそうで、彼は先住民たちの暮らしをテーマにした作品をいくつか残していて、今回紹介する作品もそのうちの一つ。物語には先祖から広大な土地を引き継いだインディ…

【サマー・スティールヘッド(夏にじます)】『頼むから静かにしてくれ』より

本作はおそらく作者であるカーヴァー自身の少年期の記憶が投影された作品です。彼の父親は貧しい労働者階層で、職を転々としながら家族を養っていましたが、アルコール依存症が高じて職を失っています。そんな一家の様子が、少年の目を通じて垣間見えます。 …

【父親】『頼むから静かにしてくれ』より

今回ご紹介するカヴァーの作品は、ありふれた日常を舞台にした初期の作品です。しかし、物語の背景について説明の無いままフェードアウト。初めて読み終えた時の私はまるでキツネにつままれたような気分で、ラストシーンの残像がしばらく頭から離れませんで…

【あなたお医者さま?】『頼むから静かにしてくれ』より

カーヴァーが描く物語は表立って物事が展開しないために、作品の意図をつかむのが難しいとされています。村上春樹はこのような謎めいた雰囲気の中に「凛とした空気漂う世界観がある」として、それを《カーヴァー・タウン》と名付けました。 次に紹介するのは…

【そいつらはお前の亭主じゃない】『頼むから静かにしてくれ』より

作者のカーヴァーは高校の卒業と同時に当時十六歳のメアリアンと結婚し、生まれ育った町を離れました。短期の仕事を続けながら大学に通い創作の勉強を開始し、二人の子供を抱える妻もウェイトレスなどをしながら家計を助けます。やがてカーヴァーの名前は文…

【人の考えつくこと】『頼むから静かにしてくれ』より

カーヴァーの初の短篇集『頼むから静かにしてくれ』は、アメリカでもっとも権威ある文学賞の全米図書賞候補に選ばれています。ただ、本の売り上げは芳しくなかったようで、安定した収入のないまま妻のメアリアンとは別居。さらにアルコール依存症に陥るなど…

【隣人】『頼むから静かにしてくれ』より

カーヴァーの描く小説の世界観は「ダーティー・リアリズム」と呼ばれています。白人労働者階級が遭遇する無秩序な現実の一面を描いたことで、当時の米文学界に衝撃を与えたことからそう呼ばれます。次に紹介する作品*1にも、そんな人々の生活に潜む不穏な空気…

【でぶ】『頼むから静かにしてくれ』より

レイモンド・カーヴァーのデビュー短編集『頼むから静かにしてくれ』から13篇をご紹介していきます。彼の作風は《ミニマリズム》とも呼ばれるオリジナルなスタイルで、それに感銘を受けた村上春樹は精力的に彼の作品の翻訳を手掛けました。カーヴァーの作品…