村上春樹レヴューのブログ

自称村上主義者の私が独自の切り口で作品をご紹介します。

2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

【緑色の獣】(『レキシントンの幽霊』より)

私たちの本当に知りたいことが「意識の奥底」に潜んでいて、時折浮上してこようとしているのに、私たちはそれを自ら封印してしまうことがあります。なぜそんなことが起こるのでしょうか?今回ご紹介する作品を通じて考えてみたいと思います。 《あらすじ》 …

【レキシントンの幽霊】(『レキシントンの幽霊』より)

今回から短編小説集『レキシントンの幽霊』に収録された七つの作品を順次ご紹介します。本書は「潜在意識へのアプローチ」というテーマが様々な形で描かれた作品集です。 村上作品では『私たちが本当に知りたいことは意識の奥底に潜んでいる』というモチーフ…

【約束された場所で】

本書はオウム真理教の信者・元信者へのインタビューで構成されたノンフィクションです。2018年に事件に関与した13人の死刑が執行され、司法の場における地下鉄サリン事件は終了しました。しかし、残された信者をはじめ、カルトによって一般社会からはみ出し…

【アンダーグラウンド】

本書は地下鉄サリン事件被害者へのインタビューで構成されたノンフィクションです。60人の証言で浮かび上がるのは、事件現場での人々の良心的な行為や地下鉄職員たちの献身的な対応だけでなく、営団地下鉄、消防庁、警察庁上層部の愚鈍な姿勢やミスの隠蔽、…

【ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編】

本作は80年代を背景に描かれていますが、それは我が国が経済大国の道を歩み始めた時代です。日本的経営が世界から称賛される一方で、過労死などの負の部分が問題視されたのもこの頃から。効率と成果を最優先する社会構造は、劣悪で不安定なものであるにもか…