村上春樹レヴューのブログ

自称村上主義者の私が独自の切り口で作品をご紹介します。

2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

【色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年】

Amazonより 村上作品の特徴は、日常を飛び越えて幻想的な世界に引き込む「つかみ」の強さにあります。読者はその不思議な読書体験を通じて、あたかも日常の矛盾や不条理さえもが解き明かされたような気分を味わうことができるでしょう。 今回ご紹介する作品…

【⑨頼むから静かにしてくれ】(『頼むから静かにしてくれⅡ』より)

Amazonより 【カーヴァー・カントリー】 レイモンド・カーヴァーが文学史において重要とされる理由は《カーヴァー・カントリー》を発見したことにあります。村上春樹はそれについて次のようにコメントしています。 どこにでもいるごく当たり前の、そして良心…

【⑧合図をしたら】(『頼むから静かにしてくれⅡ』より)

Amazonより 今回ご紹介するのは、妻の誕生日に新しくできたエレガントなレストランへ出かけた夫婦の話です。夫婦仲を立て直そうとする夫と、それにあまり乗り気ではない妻のビミョーな関係が描かれます。 『すべてはあなた次第よ』 「我々はこういう機会をも…

【⑦何か用かい?】(『頼むから静かにしてくれⅡ』より)

Amazonより カーヴァー作品には、70年代のアメリカの労働者階級の困窮がリアルに描かれています。村上春樹はそれについて『それまでのアメリカ文学においてはほとんど描かれなかったものだし、もし描かれたとしても教条主義的な色彩を帯びたものに限定されて…