村上春樹レヴューのブログ

自称村上主義者の私が独自の切り口で作品をご紹介します。

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

【⑧木の中のフェイス】(『最後の瞬間のすごく大きな変化』より)

グレイス・ペイリーの文章を受け入れるには『いささかの顎の強さが必要とされる』と村上春樹は語っています。今回ご紹介する作品はまさにその通りで、次々に現れる登場人物の込み入った人間関係と時代背景を理解するために、何度も読み返すことになりました…

【永遠に頭上に】(『バースデイ・ストーリーズ』より)

作者のデイヴィッド・フォスター・ウォレスはニューヨーク出身の作家で、挑発的な文体と内容で注目を集め、ポストモダン文学の旗手の一人と呼ばれました。また、オタク気質を抱えながら若者達を指南する伝説的スピーチを残すなど、一筋縄でいかない人物でも…

【⑦来たれ、汝、芸術の子ら】(『最後の瞬間のすごく大きな変化』より)

『来たれ、汝、芸術の子ら』は英国の女王メアリー2世の誕生日を記念して作曲されました。清々しい朝にふさわしい明るい雰囲気の名曲です。ところが本作ではその曲の登場に先だって、朝の寝床で夫が妻に語りかける愚にもつかない会話から始まります。 《あら…

【ダイス・ゲーム】(『バースディ・ストーリーズ』より)

作者のポール・セローは旅行作家として名を成した人物です。村上春樹はよほどこの方と縁があるのか、この後も彼の短編集に加えて彼の息子の作品まで翻訳しています。世界中を飛び回った体験から紡ぎ出される奇想天外な物語。今回はその一端を垣間見る本作を…

【⑥生きること】(『最後の瞬間のすごく大きな変化』より)

今回ご紹介する作品はグレイス・ペイリー作品を特徴づけている「フェイスもの」です。意味深なタイトルなのでじっくりと読み始めたのですが、そうした思いは作者の策略によってあっけなくかわされました。文学理論も文芸トレンドもどこ吹く風。ペイリーが描…