村上春樹レヴューのブログ

自称村上主義者の私が独自の切り口で作品をご紹介します。

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

【踊る小人】「蛍・納屋を焼く・その他の短編」より

本作は小人や象工場、皇帝、革命などが登場する虚構性の高い作品です。不気味な結末には《カフカ的不条理》も漂います。寓意の先にぼんやりと見えてくるモノについて語ってみたいと思います。 【あらすじ】 夢の中で小人が現れ、踊りませんかと言った。申し…

【納屋を焼く】「蛍・納屋を焼く・その他の短編」より

本作は米雑誌『ザ・ニューヨーカー』に掲載された作品です。韓国に舞台を移した映画化では、原作に忠実な『バーニングドラマ版』と社会派仕立ての『バーニング劇場版』が存在します。 《あらすじ》 広告モデルをしている彼女には僕以外にも何人かのボーイ・…

【蛍】「蛍・納屋を焼く・その他の短編」より

本作は話題の長編『ノルウェイの森』の起点となった作品です。これまでの作風から一転したリアリズム調の文体に鮮烈な印象を受けた読者は多いのではないでしょうか。 《あらすじ》 文京区で寮生活をおくる「僕」は中央線の車内で高校時代の友人の恋人と偶然…

【図書館奇譚】「カンガルー日和」より

本作は若い読者に向けて描かれた寓話的な物語です。世界各国の言語に翻訳されており、絵本になったバージョンも存在します。 【要旨】 図書館の地下室で老人から本を借りた僕は牢屋に閉じ込められてしまった。 1か月後に本の内容を暗記していたらそこから出…

【サウスベイ・ストラット】「カンガルー日和」より

本作のタイトルを正確に記述すれば『サウスベイ・ストラットーーードゥービー・ブラザーズ「サウスベイ・ストラット」のためのBGM』となります。題名からして遊び心が溢れたゴキゲンな作品に仕上がってます。 【要旨】 私は一人の女を捜し出すためにサウスベイ…

【かいつぶり】「カンガルー日和」より

進学、就職、結婚等々。これらは俗に人生の《ターニングポイント》と呼ばれています。本作はその一つである就職をめぐって奇妙な体験をした男の話です。 【要旨】 今日はやっとみつけたうまい仕事の最初の出社日である。 長い廊下を歩き続けて、なんとか葉書…

【スパゲティーの年に】「カンガルー日和」より

本作には、《孤独》の闇のなかでひたすらスパゲティーを作り続ける主人公の姿が描かれています。 ボクら大人たちが待つ「まっとうで平凡な世界」への船出を目前にして、この若者はいったい何を躊躇しているのでしょうか? 【要旨】 1971年、それは僕にとってス…