村上春樹レヴューのブログ

自称村上主義者の私が独自の切り口で作品をご紹介します。

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

【UFOが釧路に降りる】(『神の子どもたちはみな踊る』より)

今回から『神の子どもたちはみな踊る』に収められた6つの作品をご紹介します。いずれの作品も「1995年の2月の出来事」という設定なのですが、その年の1月に発生した阪神・淡路大震災に深くかかわり、3月に起こる地下鉄サリン事件を予見する内容になってい…

【スプートニクの恋人】

本書は『ノルウェイの森』以来の恋愛モノです。小説家志望の女性が登場し、過去の作品ではお目にかかれない可愛らしい文章も登場します。また、随所に小説指南や人生訓が挿入されていて、中期村上作品のエッセンスがギュッと詰まったお得な内容になっていま…

【殺人詩人】(『犬の人生』より)

14回にわたってご紹介してきた本書の最後の作品のご紹介になります。今回はこれまでのような「ちょっと変な感じ」を通り越して、「猟奇的な感じ」にまで踏み込んでいます。果たして殺人詩人が書いた詩集は芸術に値するのか? 作者であるマーク・ストランドは…

【ドロゴ】(『犬の人生』より)

ドロゴとはこの物語に登場する青年の名前です。詩人と思われる語り手の心象風景のなかに彼は現れて、言葉数少なめに詩人に詰問します。その相克は何を意味するのでしょうか? ドロゴの正体は何なのでしょうか? 残り少なくなった謎解きに引き続きお付き合い…

【ケパロス】(『犬の人生』より)

本作には、ギリシャ神話の『変身物語』に登場するケパロスをめぐる二つの物語が描かれています。一つ目は神話の舞台を現代に移した物語。二つ目はその後日談となるマーク・ストランド独自の創作です。久々にギリシャ神話に触れて、その自由で壮大な世界観に…

【ザダール】(『犬の人生』より)

ザダール*1はクロアチア中部の小さな港町で、ヨーロッパを代表する観光地と言われています。各種旅行代理店のHPを見ると、ローマ帝国時代の遺跡や中世に建てられた教会など、観光スポットが揃った魅力的な場所であることが分かります。今回ご紹介する物語に…