村上春樹レヴューのブログ

自称村上主義者の私が独自の切り口で作品をご紹介します。

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

【皮膚のない皇帝】(『バースデイ・ストーリーズ』より)

作者のリンダ・セクソンはモンタナ州立大学の教授兼作家。どちらかというと小説よりも宗教学の哲学、思想の面で功績をあげている人物のようです。彼女の経歴紹介には、村上春樹によって日本語に翻訳されていることが輝かしい実績として記されています♡ 《あ…

【⑤陰鬱なメロディー】(『最後の瞬間のすごく大きな変化』より)

訳者の村上春樹はグレイス・ペイリーの書く小説について『知的でソフトなエニグマに満ちた作品』であると語っています。その難解な暗号を読み解くことは何ものにも代えがたい喜び!となるはずでしたが、今回は正直かなり悪戦苦闘しました。この空中分解すれ…

【バースデイ・ケーキ】(『バースディ・ストーリーズ』より)

作者のダニエル・ライオンズはアメリカのTV放送局HBOの脚本家兼プロデューサー兼小説家です。本作は1993年に発表された短編集に収録されています。この奇妙な読み応えの作品が、アメリカの読者に受け入れられている理由について考えてみました。 《あらすじ…

【④午後のフェイス】(『最後の瞬間のすごく大きな変化』より)

本作から作者グレイス・ペイリー自身を投影したと思われる主人公に『フェイス』という名前が付きます。ただし、1人称で語られていた文章は途中から3人称に、さらに登場人物たちが次々と割り込んで独自の主張を繰り広げ、物語はにぎやかな〈ポリフォニー*1〉…