村上春樹レヴューのブログ

自称村上主義者の私が独自の切り口で作品をご紹介します。

2024-07-01から1ヶ月間の記事一覧

【⑯パーシー】(『巨大なラジオ/泳ぐ人』より)

Amazonより 本作は、都会的で洗練された作風から脱却した、チーヴァーの晩年の作品です。アメリカ社会の歩みと結びついた筋書きの裏には、意外な事実が隠されていました。 語り手は、叔母のフローレンスとその家族にまつわるエピソードを回想します。フロー…

【騎士団長殺し(第2部「遷ろうメタファー編」)】

Amazonより 『騎士団長殺し』の後半では、〈メタファー〉を中心に村上春樹の独特な世界観が展開します。 認知言語学では、〈メタファー〉は単なる修飾技法ではなく、私たちの基本的な認知能力の一つとされていて、言語活動のみならず、思考や行動、日常のあ…

【騎士団長殺し(第1部「顕れるイデア編」)】

Amazonより 村上春樹の長編小説『騎士団長殺し』を、2回に分けてご紹介します。 本書は、モーツアルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』をオマージュした物語です。主人公の「私」は、派手な立ち回りはないものの、ドン・ファンのように性に対して開放的な人物…

【⑮林檎の世界】(『巨大なラジオ/泳ぐ人』より)

Amazonより 本作は、故国を離れ、イタリアの田舎で孤独に暮らす老齢のアメリカ詩人の物語です。彼はノーベル賞が期待されるほどの世界的に高名な詩人で、愛読者も多く、人々の尊敬を受けています。しかし、ふとしたきっかけで激しい性的妄想に取り憑かれ、創…