
本作に登場する加納マルタとクレタ姉妹から、私は現在も活躍している美人ユニットの叶姉妹を思い浮かべます。テレビで彼女たちの姿を目にするたびに、この作品のことが自然と頭に浮かんでくるのです。
《あらすじ》
私の名前は加納クレタ。姉のマルタと共に暮らし、彼女の仕事を手伝っている。けれども、私には一つの悩みがあった。それは、男たちが私を見ると必ず襲いかかってくるということだ。かつて一度だけ、襲おうとした男を殺してしまったことがある。その男は警官だった。物音を聞きつけたマルタが駆け付け、大きなバールで男の頭の後頭部を殴り殺した。
『警官殺し』
そして私たちは喉を裂いた警官を裏庭に埋めた。ピストルも手錠も紙挟みもブーツもみんな埋めてしまった。穴を掘るのも、死体を運ぶのも、穴を埋めるのも全部マルタがやった。マルタは、ミック・ジャガーの声を真似して『ゴーイング・トゥ・ア・ゴーゴー』を歌いながら作業を片付けた。
幽霊となった警官が家の中に現れるようになった。しかし、血を抜かれているため声を出すことも、クレタを襲うこともできない。クレタはその幽霊を挑発しながらも、次第に男への恐怖を克服し、強さと自信を身につけていった。
『外の世界へ』
ある日電話がかかってきた。新しく建築されることになった大型火力発電所の設計をやってみないかという誘いだ。それは私の胸をわくわくさせる。私は頭の中で新しい発電所の図面をいくつも引いてみる。私は外の世界に出て、いっぱい火力発電所をつくりたいのだ。
クレタは、やがて外の世界で才能を発揮し、成功を収める。そして堅固な防備に囲まれた優雅な生活を手に入れるが、過去の罪の報いは思いがけない形で彼女のもとに訪れる。
【ジェンダー・ギャップ】
初めてこの作品を読んだとき、私はその荒唐無稽な内容にただ驚くばかりでした。主人公の美女が男性に抱く恐怖や敵意、そしてそれに伴う罪悪感は、当時の私には到底理解し難いものでした。しかし、読み返すうちに、こう考えるようになりました。
これは、多くの女性が心の奥に抱える一つの心象風景なのではないか。
日本社会におけるジェンダー意識が、欧米諸国に比べて大きく遅れているのは周知の事実です。私たちの社会通念の中には、今でも多くのジェンダー・ギャップが残っています。形だけの平等を急ぐのではなく、まずは心の中にある偏見を取り除き、性の異なる相手の内なる声に耳を傾けることが大切なのではないでしょうか。
とはいえ、そのことを頭で理解していても、この作品に初めて読んだときの自分を思い返すと、私自身の中にも矛盾があったことに気づかされます。「女性はこうあるべきだ」という固定観念に囚われていたのは、ほかならぬこの私自身でした。