
子どもの頃に見た映画『ゾンビ』。生前の記憶も理性も失った死者たちの蘇った姿は、醜く、動きはぎこちなく、ただただ哀れなモンスターそのものでした。今の感覚で振り返ると、死者をここまで冒涜的に描くのはやや行き過ぎだったかもしれません。それでも「醜く哀れな存在」としてのゾンビのイメージは、今でも鮮烈に私の記憶に焼き付いています。
《あらすじ》
真夜中、墓場のそばの道を男女のカップルが歩いていた。不穏な空気が漂い、邪悪なことが起こりそうな雰囲気。ゾンビの気配を感じるが、何も見えない。その代わりに、男が突然こう言い出した「どうして君はそんなみっともない歩き方をするんだろうな」
【邪悪な予感】
「どうして君はそんなみっともない歩き方をするんだろうな」と男が唐突に言った。「私?」と女は驚いて言った。「私、そんなにみっともない歩き方するかしら?」「ひどいよ」と男は言った。「そう?」「がにまただ」女は唇を噛んだ。
彼女は男を愛していたし、男だって彼女のことを愛していた。二人は来月には結婚を控えていた。彼女はなんとか不快な空気をやり過ごそうとするが、男の乱暴な言葉は留まる気配を見せない。ゾンビが姿を現すその時まで、彼の暴言は続いた。
【品格の問題】
皆さんもご存じの通り、《品格》とは礼儀や節度、そして気高さを備えたあり方を指します。昔も今も問題とされる「女性の品格」「男性の品格」「横綱の品格」「皇室の品格」、果ては「国家の品格」まで、さまざまな場面で語られてきました。しかし、そこには明確な価値基準が存在しないため、自己流の解釈も加わって、時に「言ったもの勝ち」の様相さえ呈することさえあります。
本作の中で、男が彼女を侮辱する言葉を丁寧に辿っていくと、「品の追及」発言から始まり、やがて「格の貶め」方向へと変化していくことが分かります。つまり、相手に「品格」を相手に強要することは、しばしば相手を見下してマウントを取る意図を含んでいいるのかもしれません。
彼女を脅かしたゾンビの正体が分かり、今夜は安心して眠れそうです。そして明日こそは、私の中のゾンビが顔を出さない一日となりますように( ゚Д゚)