結末を読まないという制約のなかでブログ記事を書き続けている。そのような状況は何かを意味するかもしれないし、何も意味しないかもしれない。しかしたぶん何かは意味しているはずだ…さて、気分が乗ってきたところで引き続き【第二部】のご紹介♪
《第二部の途中(44章)までのあらすじ》
私は中年と呼ばれる年齢にさしかかっていた。今の生活に疑問を感じた私は上司に辞職願を出した。職を辞して二ヵ月ばかりたったある夜、名も知らぬ地方都市の図書館で働いている夢を見る。私はその夢を叶えるべく、福島の小さな町の図書館の館長に就任した。
『影を失ってしまった人間』
「わたくしは影を持たぬ人間なのです」「影を持たない?」、私は彼の言葉をただそのまま反復した。子易さんは表情を欠いた声で言った。「はい、そうです。わたくしは影を失ってしまった人間なのです」
初代館長である子易(コヤス)は、迷える心を受け入れる特別な場所として、私財を投じてこの図書館を設営した。彼は死んでなお幽霊として現れ、新任館長の『私』に図書館の運営について助言を与え続けます。
【元型(アーキタイプ)】
《元型》とは、心の奥深くから生まれる全ての人間に共通する心のイメージであり、分析心理学における重要な概念です。「太母」「影」「アニマ・アニムス」「トリックスター」「老賢者」が、その代表的なイメージ像で、生涯を通じて意識と無意識を含めた心全体を成熟させていくためのヒントを与えます。
幽霊となって登場する子易は、「老賢者」のイメージが具現化したものと考えられます。子易の手招きにより『私』は夢に見た図書館で働くことが出来ました。それは夢を介して無意識の願望を知り、それを意識に統合していくという《個性化の過程*1》を辿っています。つまり、子易はこの世に存在しない幽霊でありながら、誰よりも心の通じ合う《元型》として『私』に寄り添います。
一方で『高い壁に囲まれた街』は、個人的な夢とは別の特別な精神の宿る場所。冬は寒く長く、多くの獣たちが飢えと寒さで死んでいき、人々はうつむいて細々と生活を送る理想の楽園とはほど遠い世界です。そこを訪れることは必ずしも《個性化の過程》とは言えない新たな謎が隠されているようです。
そんな謎の場所に憧れを抱くひとりの少年が現われます。イエロー・サブマリンのヨットパーカーを着たその少年は『高い壁に囲まれた街』にたどり着くことを望んでいますが、そんなことは出来るでしょうか? もし出来たとして、そこにいったいどんな意味があるのでしょうか?
【第三部】はとてもページ数が少ないので、うっかり最後まで読んでしまわないよう手前に付箋をつけておきました。引き続き次回もどうぞ宜しく。