村上春樹レヴューのブログ

自称村上主義者の私が独自の切り口で作品をご紹介します。

中国行きのスロウ・ボード

【シドニーのグリーン・ストリート】「中国行きのスロウ・ボート」より

この作品は、若い読者向けに書かれた寓話形式の読み物になっています。ストーリーは単純明快でコメディーの要素も盛り込まれていますが、読後に少しだけ複雑な感触が残りました。 【要旨】 羊男がシドニー・グリーンストリートの僕の探偵事務所に現れた。 依…

【土の中の彼女の小さな犬】「中国行きのスロウ・ボート」より

『午後の最後の芝生』に続く、職業作家の道を歩み始めた作者の第2弾となる短編作品です。当時はまだ目新しい分析心理学の知見が取り入れられています。 【要旨】 時代に取り残されつつある古きリゾート・ホテル。 食堂で出会った女性が打ち明ける心の傷。 僕…

【午後の最後の芝生】「中国行きのスロウ・ボート」より

短編集『中国行きのスロウ・ボート』に収録された5つ目の作品であるこの短編は、作者の初めての長編作品『羊をめぐる冒険』の発表を挟んで書かれたものです。豊かな物語性を持っているという点で、先の4作品からは格段の進化を遂げています。 【要旨】 僕…

【カンガルー通信】「中国行きのスロウ・ボート」より

この作品はカセットテープに録音した一人語り、という一風変わった体裁をとっています。今回改めて読み返してみて、転機を迎えた作家の並々ならぬ決意が示されていたことに気付かされました。 【要旨】 柵の中の4匹のカンガルーがもたらす啓示。 苦情の手紙…

【ニューヨーク炭鉱の悲劇】「中国行きのスロウ・ボート」より

この作品の題名の『ニューヨーク炭鉱の悲劇』は、ビージーズの曲名から来ていて、その歌詞にはベトナム戦争犠牲者への追悼が込められているとも言われています。初期の村上作品としては稀有な社会派の香りがする作品をご紹介します。 【要旨】 夜の動物園で…

【貧乏な叔母さんの話】「中国行きのスロウ・ボート」より

広場の銅像を見上げながら《記号探し》が始まるこの作品は、あのブローティガンの名作『アメリカの鱒釣り』*1の冒頭を彷彿とさせます。その本を抱えているだけでカッコ良かった時代もあったとか、無かったとか('ω') 【要旨】 一角獣の銅像が立つその広場で、…

【中国行きのスロウ・ボート】「中国行きのスロウ・ボート」より

本書は、デビュー間もない村上春樹が取り組んだ初短編集の表題作です。彼の作風はこののちいくつかの変遷を遂げていますが、改めて読み返すと、40年たった今でも物語の軸となる部分は変わっていないことがよく分かります。 【要旨】 中国人教師への信頼に、…